この記事は
「受動態の文を英文解釈するとき、非常に訳しにくいことがあります。受動態と言ったら『~られる・~される』といった訳し方が一般的かと思うのですが、どうもこの訳にこだわりすぎると全体としてイマイチな訳が出来上がるときがあるような気がします。何か訳し方のコツ的なものはありますか?」
と疑問に思っている英語リーディング学習者に向けて記事を書いています。
● みなさんこんにちは、まこちょです。
英文法の単元になかに「受動態」というものがあるのはご存知かと思います。例えば以下のような英文がそうですよね。
例
This book is read by young children.
「この本は幼い子供達に読まれる」
「be + 過去分詞」という形で「~れる・られる」の意味にできるのが「受動態」なのですが、この形が英文解釈に組み込まれると若干厄介になります。なんか思った以上に読みにくいというか。
特にこのbe+過去分詞が助動詞と合体すると非常に読みにくくなるのは余りにも有名です。形としては「助動詞+be+過去分詞」ですね。
例
The door must not be opened.
「そのドアは開かれてはいけません」?
う~ん…なんか今一つしっくりとしませんね。今回の悩みの内容ではないですが、何か「れる・られる」に引っ張られているというか…微妙です。
このように受動態と助動詞が組み合わさった形は、実は意外に訳しづらいので英文解釈にも一工夫が必要になる場合があるんです。
そこで今回は「~られる・~される」にこだわらない受動態の訳し方のコツを徹底解説!英文リーディングに効果絶大な方法を教えます。
以下の記事を読むと、次の点であなたの英語リーディング能力は向上します。
▶ 実は「~される・られる」の訳し方にこだわらなくていいことが分かる
ぜひマスターしていただいて、今後の英文リーディングにお役立てください。
受動態はいったいどのようにしてできるのか
受動態を効果的に訳すには、そもそも受動態がどうやって出来上がるのかをしっかり理解していることが重要です。
例
Everyone loved the boy.
「みんながその少年を愛した」
↓
Everyone(S) loved(V) the boy(O)
この文は能動態ですが受動態にする場合は目的語(O)を主語の位置に持っていきます。軽く解説していますが実はこの点は受動態を語る上で非常に重要なポイントになるんですね。
The boy was loved by everyone.
「その少年はみんなに愛された」
そう、「受動態」というのは、もともと能動態の目的語(O)を主語(S)にしたもの。したがって上記の黄色い箇所はもともとは能動態の目的語「~を・に・と」の位置にあったんです。
そのことを理解していると上記の文は以下のように訳せますよね。
The boy was loved by everyone.
「その少年はみんなに愛された」
↓
「その少年【を】愛したのはみなさんだ」
そう、実は受動態表現はその気になったら「能動態」で訳してもいいんです。なぜって、もともと「能動態⇔受動態」というのは自由に行き来できるもので、意味は同じはずですからね。
つまり、受動態は訳しにくい場合は能動態表現で訳してもかまわない、ということになります。
この訳し方は、「助動詞+受動態」の形になったときに、特に威力を発揮するんです。例えば次の文なのですが、みなさんだったらどうやって解釈しますか?
例
The book can be read by the girls.
上記の例文ですが、まともにいったら「その本はその少女たちによって読まれる(ことができる)」と、ちょっとしっくりこない訳出になりますよね。
そんな時は受動態の主語を能動態の目的語、つまり「~を・~に」として前から訳してみましょう。すると
The book can be read by the girls.
「その本【を】読めるのはその女の子たちだ」
と、しっくりと無駄がなく解釈できるようになるんです。
受動態の「~される・られる」の訳語にこだわって、全体的にイマイチの訳出になるくらいだったら、いっそのこと能動態で、ただし主語を目的語として訳したほうが頭に残りやすい訳出ができるので覚えておくと良いでしょう。
以上の点を踏まえた上で今回の課題英文を読んでみましょう。難しいですが受動態の訳し方が極めてスムーズになることが実感できるはずです。
「受動態」の解釈問題
【課題】
Nobody can be termed a complete man who has no knowledge of what science has to teach.
(引用:まこちょ英語ブログより)
【単語・表現】
- term A B 「AをBと呼ぶ」
- complete 「完全な」
解説
いきなり助動詞+受動態の形で始まるこの英文、実は英文リーディングでよく見るんです。
このままいくと「誰もが呼ばれることはできない」ですが、なんか変です。こんな日本語はめったに使いませんね。
こんな時は受動態の「~される・られる」の訳にこだわらないように訳を工夫してみましょう。
termは動詞で「~を呼ぶ」という意味。つまりcallと使い方が同じです。
callは後ろにO+Cの第5文型を取る有名な動詞でtermも全く一緒です。つまり能動態の形は
call + O + C「OをCと呼ぶ」
=term + O + C
となっていたと。この目的語(O)が主語(S)になって受動態の形を作っていたんですね。
では、今回の主語であるNobodyを能動態の本来の位置に戻してみましょう。
Nobody can be termed a complete man…
↓
S can term nobody a complete man…
ところでnobodyのnoはnot anyに分解できますよね。その方が訳しやすいですのでちょっと変形してみましょう。
(S) cannot term(V) anybody(O) a complete man(C)…
そうするとこの部分は「どんな人でも完璧な男と呼べない」と訳せることが分かりました。
「誰もが完璧な男と呼ばれることはできない」よりもよっぽど日本語らしい、頭に残る訳が出来上がりましたね。
このように受動態をそのまま訳すよりも、能動態に直して読んだ方がスムーズに訳出できることは覚えておいてください。
その他で気になる箇所を解説します。
関係代名詞の先行詞はanybody
今回の文は、受動態の形から能動態にもどすとさらに「お得なこと」があるんです。それは後ろの関係詞節の先行詞がより明確になるということ。
has no knowledge of…は「~についての知識を持たない ⇒ ~について知らない」です。
もしこの関係詞節の先行詞が a complete manだったとしたら
a complete man「完璧な人」≠「知識がない(人)」
と矛盾してしまうことに気がついたでしょうか。
そう、この関係詞節の先行詞はa complete manではなくて、実はanybodyなのです。
「(~について知らない)人はだれでも完璧な人とは呼べない」
関係詞節中に出てくるhave toは要注意
関係代名詞節中に出てくるhave toは2種類の訳し方があることは知っておきましょう。
例えば以下のwhatは関係代名詞のwhatですが、節の中にhas toがありますよね。
このときhave toを「しなければならない」という訳出しか知らない、というとちょっと心細いです。
もし、上の訳出しか知らなかったら、例えば上の箇所でしたら「科学が教えなければならない(こと)」としか訳せないわけですが、
have toの元々の意味は「(いやいやながら)しなければならない」です。
つまり裏を返せば「いやいやできる」ものが主語(S)に来るのであり、それは「意思を持っているもの」が主語(S)に来ることが圧倒的に多いことに他なりません。
したがって今回のscienceのように、意思を持てないものが主語(S)になった場合はhave toの訳出は慎重になりましょう。
have to do は「~しなければならない」の他に、have A to doのAが関係詞になって前にいってしまった結果に出来上がる「見せかけのhave to」と呼ばれる用法があるんです。
例
He has something to eat.
↓
something (which) he has to eat
↓
what he has to eat
「彼が食べる(べき)もの」
もともとは不定詞の形容詞用法から変形したものが、「見せかけのhave to」の正体です。今回の訳出もwhat science has to teach「科学が教えなければならないもの」ではなく「科学が教えること(内容)」と訳すのが良いでしょう。
全体訳「科学が教えてくれることについて分からない人は、だれ一人として完全な人間と呼ぶことはできない」
あとがき
今回は受動態の訳し方について解説いたしました。
コツとしては受動態で訳したときに訳しづらいな、と思ったら【能動態に戻して訳してみる】のがポイントです。
ぜひマスターして、今後の英語学習にお役立てください!また会いましょう。
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