この記事は
「先生、to不定詞ってtoの後ろは動詞の原形じゃないですか。ということはto不定詞の過去形はないのでしょうか?」
と疑問に思っている英文リーディング学習者に向けて記事を書いています。
● みなさんこんにちは、まこちょです。
全国の不定詞マニア(?)のみなさま、英文解釈してますでしょうか。
今回の質問は、英語を学習したことがある人は一度くらいは考えたことがあるのではないでしょうか。
そう、それは不定詞の「過去形」。
「不定詞の過去形」と書くとちょっと語弊がありそうなのですが、確かに「~すること」を「~【した】こと」にしてみてと言われると戸惑ってしまうかもしれませんよね。
なぜなら不定詞の基本形は「to+動詞の原形」でどう頑張っても動詞の原形の箇所を過去形にすることができないからです。
例えば「サッカーをすること」と不定詞を使って表現する場合、たいていは以下のように表現するはずです。
to play soccer
ところがこれを「サッカーを【した】こと」と表現する場合はどうでしょう?思わずこのように表現したくなりますよね。
to played soccer
ですが、これはもちろん誤り。先ほども書いた通り、不定詞は「to+【動詞の原形】」と表現しなければなりません。
では、to不定詞を使って「~したこと」と表現することはできないのだろうか?と思うかもしれませんが、実はしっかりと不定詞用の「過去形表現」があるんですね。
これを文法用語で「完了不定詞」と言ったりするのですが、決して難しい用法ではありません。ですが、英文解釈のときにこの「完了不定詞」を使ったことによる時制の違いをしっかりと理解することは重要です。
そこで今回は「完了不定詞」について徹底解説!以下の記事を読了すると、次の点であなたの英文解釈能力は段違いに向上します。
▶「不定詞の過去(大過去)」表現と単なる完了形の違いが分かる
ぜひマスターしていただいて今後の英文リーディング学習にお役立てください。
完了不定詞と単純不定詞の違いとは
まず、完了不定詞と通常の不定詞句(単純不定詞といいます)は何が違うのかを例文を見ながら理解してみましょう。
例①
He is said to be a teacher.
「彼は先生だと言われている」
この文の主節はHe is saidなのですが「現在形」で書かれています。
それを受けてto be a teacherと不定詞句でつなげている形なのですが、この時to doと「単純不定詞」で書くとto以下の時制について以下のことが分かります。
⇒ 主節の時制と「同じ」かそれよりも「未来」の内容
つまりここでは
He is said
「彼は言われている」
⇒ isは現在時制
to be a teacher.
「先生であること」
⇒ beは「動詞の原形」ですが、時制はHe is saidと同じ「現在」
ということになります。
toの後ろはどこまで行っても「原形」ですから、この箇所をじ~っと見ていても判断できません。ですから単純不定詞(to do)で表現された不定詞句は、主節と同じ時制か、主節よりも未来のことを表すとルール上決められているんです。
では次の英文はどうでしょうか。
例②
I want to be a teacher.
「私は先生になりたい」
この文も不定詞句が使われていますよね。このto beの「時制」は何でしょうか。単純不定詞で書かれている場合は、主節の時制と「同じ」か「未来のこと」です。ここでは
I want
「私は望む」
⇒ wantは「現在形」
to be a teacher
「(これから)先生になること」
⇒ 主節よりも「未来」の内容
とわかるわけですね。
まずは、通常の不定詞句は主節に対してどのような「時制」を表しているかを理解することが重要です。
では、to不定詞句の箇所を、主節よりも【前】の時制を表す場合にはどうしたらよいかなのですが、ここで「完了不定詞」を使うんですね。形は to have 過去分詞と表現します。
⇒ 主節より「前」の時制を表す
例③
He is said to have been a teacher.
この文は先ほどの例①のto beの部分をto have beenにしたわけですが、これだけでto have been a teacherは主節の時制の「前」、つまり現在形の「前」ですから「過去形」を表すことができるというわけです。したがって意味は
He is said to have been a teacher.
「彼は(昔)先生だったと(今)言われている」
↓
「彼は先生だったと言われている」
という意味になります。では次の例文のto以下の時制はなんでしょうか。
例④
He was said to have been a teacher.
「彼は先生であったと言われていた」
今度は主節がisではなくてwasですね。ということはto have beenで表現されているこの「完了不定詞」は主節の時制の1つ前、つまり過去形よりも「前」の「過去完了形(大過去)」を表しているということになります。
He was said
「彼は言われていた」
⇒ 主節の時制は「過去」
to have been a teacher.
「先生であったこと」
⇒ 時制は「大過去(過去より1つ前)
ここで主節と完了不定詞の関係についてまとめてみましょう。
主節 + 完了不定詞の関係
⇒ 主節が現在形 + 完了不定詞は過去形
⇒ 主節が過去形 + 完了不定詞は過去完了形(大過去)
※完了不定詞の絶対押さえるべき注意点
この完了不定詞の用法ですが、若干の注意点があります。以下のポイントはよく持ち上がる質問ですのでぜひ覚えておいてください。
質問①:主節が「現在形」で完了不定詞が「過去完了形(大過去)」を表すパターンはあるか?
⇒ ありません。完了不定詞は、あくまでも主節より【1つ】時制が前になることがルール上決められています。過去形を飛び越えて「過去完了形」になることはない、ということですね。
質問②:完了不定詞が「過去形」を表すのではなく、単に「現在完了形」として使われる場合はありますか?
⇒ 非常に重要な問題です。実はこのパターンはあるんですね。例えばto have 過去分詞には次の二つの可能性を考えなくてはなりません。
to have 過去分詞の2つの意味
- ① 主節より「前」の意味のto have 過去分詞
- ② 「完了」としての意味のto have 過去分詞
以下の例文をみて理解していただくと幸いです。
例
She seems to have been sick last week.
この文は文中にlast weekがありますので、英文中のどこかに「過去時制」が必要です。ですが主節のseemsは現在形ですよね。
そう、つまりto have been の部分が「過去」の意味になってもらわないと困ります。この例文は主節の時制の前の時制の意味で使われたto have beenです。
「彼女は先週病気だったようだ」
では次の例文は?
例
She seems to have been sick for a week.
今度は「期間」を表す語句のfor a weekがあります。つまりto have beenは「現在完了形」として使われていることがわかります。つまり「現在」なんですね。
意味「彼女はもう一週間も具合が悪いようだ」
この2つの点は英文解釈上、かなりデリケートな部分ですので注意しましょうね。
主節が「希望・意図」の動詞に「完了不定詞」を使うと「絶望」を表す
最後にちょっとした暗記が必要な「完了不定詞」を使った用法を紹介します。
完了不定詞(to have 過去分詞)を使うと主節の時制より1つ前の時制を表すことができると今回学習しましたが、主節の動詞が「希望・意図」を表す場合、ちょっと訳し方に工夫が必要です。例えば
例⑤
I wanted to have finished my homework.
こんな形ですが「私は宿題を終わらせたことを望んだ」なんて意味不明な訳を与えて満足している場合ではありません(笑)
この場合は「私は宿題を終わらせようと思ったができなかった」と訳します。
⇒ 「~しようと思ったのにできなかった」
例えばよく使う表現として
● intended(expected / meant) to have 過去分詞
「~するつもりだったのだができなかった」
● wanted(wished / hoped) to have 過去分詞
「~したかったのにできなかった」
● promised to have 過去分詞
「~すると約束したのにできなかった」
● was(were) to have 過去分詞
「~しようとしていたができなかった」
と、ある程度訳し方を知っておかないと対処できない用法があることは押さえておきましょう。
例
Ken meant to have got up at six.
「ケンは6時に起きるつもりだったができなかった」
しかしこの用法、本当に「絶望」しか感じませんね(笑)
あとがき
今回は完了不定詞の訳し方について解説してみましたがいかがでしたでしょうか。
ポイントとして完了不定詞は
- 主節の動詞の時制の【1個前】の時制を指す
- 完了不定詞が「現在完了形」として現在を表す場合がある
の2つをしっかり押さえて英文解釈に臨みましょう。結構難しい用法かと思いますよ。
また、会いましょう!
不定詞について徹底的に集中学習したい方は以下のカテゴリ一覧から順に記事を読んでみてください。英文リーディングでつまづきそうな「不定詞」の盲点が丸わかりです。
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