この記事は
「原形不定詞とは一体何でしょうか?通常の不定詞とはどのように違うのか教えてほしいです。また原形不定詞は通常の不定詞と同じように使えるものなのでしょうか?」
と疑問に思っている英文リーディング学習者に向けて記事を書いています。
●みなさんこんにちは、まこちょです。
英語学習者にとって「不定詞」という文法事項は避けられない超重要項目のうちの一つです。
ですがこの不定詞の用法、「不定詞の3用法」なんて言われているからお分かりのように、「to+動詞の原形」と形こそは同じですが、意味・使い方が全く違うので、英語学習者泣かせの単元なんですね。
もちろん不定詞の意味を取り違えると、英文解釈にも多大な影響を与えますので、当ブログでも「不定詞攻略」は最大テーマの一つとして取り上げています。
「集中的に不定詞のリーディングポイントを学習したい!」という方は、お手数ですが以下の不定詞のカテゴリ一覧からお目当ての記事でどっぷり学習していただけると幸いです。
ところで不定詞学習を続けているとある時を境にある文法用語を聞くようになるんですね。
そう、それが「原形不定詞」と言われるもの。
これなんでしょうね?曲がりなりにも原形【不定詞】となっているわけですから、不定詞の仲間なのは間違いないのでしょうが、いったい通常の不定詞とはどこが違うのでしょうか。
また原形不定詞は通常の不定詞と同じような使い方ができるのでしょうか?と非常に質問が多いのがこの箇所なんです。
またリーディング学習をしている人には良くない話なのですが、この原形不定詞は実際に英文中でよく見ます。したがって、ただ何となく身につけているだけでは英文解釈で致命的な「読みミス」をしてしまう可能性が大ですね。
そこで今回は英文中で使われている「原形不定詞」について徹底解説!以下の記事を最後までお読みいただくと、次の点であなたの英語能力は大幅に向上すること請け合いです。
▶原形不定詞は一体どういうときに使われているか分かる
ぜひマスターしていただいて、今後の英語学習にお役立てください。
原形不定詞とはtoのない不定詞のこと
みなさんがご存じの不定詞というのは「to+動詞の原形」という形をしています。原形不定詞とはそこからtoを取ったもの、したがって「toのない不定詞」を指します。
なあんだ、と思ってしまった人もいるでしょう。その通り、原形不定詞なんて仰々しい(?)名前にびっくりすることはないんです。
しかもみなさんはこれまでの学習で、「原形不定詞」とは紹介されずに英語学習をしていた可能性すらあるんです。ちょっと整理してみましょう。
原形不定詞が使われている箇所
原形不定詞はもちろん通常の不定詞とは異なり、使いどころが限定されますが、これまで「原形不定詞」というネーミングを使わないで、単に「動詞の原形」と言われていた箇所も含まれます。
① 助動詞の後ろ
例えば助動詞(can / should / mustなど)の後ろは「動詞の原形」を置く、と中学生の時に学習したかと思うのですが、実はこの動詞の原形も「原形不定詞」だったりします。
ただ単に当時は無用な混乱を避けるために「動詞の原形」と呼ばれて学習しているだけに過ぎないんですね。
例
He must study his homework tomorrow.
「彼は明日宿題をしなければならない」
⇒ studyは「原形不定詞(動詞の原形)」
had better「~したほうがよい」は2語で1語の「助動詞」として扱われていますが、これだってhad betterの後ろは原形不定詞という名の動詞の原形なんです。
例
You had better close the window.
「窓を閉めた方がよい」
⇒ closeは「原形不定詞(動詞の原形)」
ちなみに助動詞の後ろの原形不定詞(動詞の原形)は英文中によく省略されることがあることは、しっかりと押さえておきましょう。以下の記事で徹底的に検証しています。
② 使役動詞・知覚動詞
「~させる」という、make / let / haveを使った使役動詞の用法にも「原形不定詞」が使われます。使役動詞の用法はSVOCの第5文型で使われるのですが、形は
make(let / have) + O +原形不定詞(動詞の原形)
「Oに~させる」
となります。このSVOCのCの部分に原形不定詞が使われるんですね。
例
Makocho made her sing.
「まこちょは彼女に歌わせた」
↓
Makocho(S) made(V) her(O) sing(C).
この使役用法というのは主語(S)がみずから手を下しません。目的語(O)に【やらせる】んです。またくもって私好みの用法と言っていいでしょう。
ちなみにこの使役動詞の用法ですが、目的語(O)を主語にした受動態にしたときに、補語(C)の原形不定詞から「原形」の文字が取れます。
つまり原形不定詞から不定詞にチェンジするんですね。これは資格試験などの文法問題でもよく問われる箇所ですので要注意。
Makocho(S) made(V) her(O) sing(C).
↓
She was made to sing by Makocho.
「彼女はまこちょのせいで無理やり歌わざるをえなかった」
知覚動詞(see / hear / feel)のほうも使役動詞と全く同じ使い方があるんです。つまり
see ( hear / feel ) + O +原形不定詞
「Oが~するのを見る(聞く・感じる)」
例
I saw the girl cross the street.
「私は女の子が通りを横切るのを見ました」
↓
I(S) saw(V) the girl(O) cross(C) the street.
受動態にすると動詞の原形の前にtoをつけるのも使役動詞と全く一緒です。
The girl was seen to cross the street (by me).
「その少女は(私によって)通りを横切るのを見られました」
SVOCの第5文型の訳し方が今一つあいまいな方は以下の記事を読んでみましょう。SVOCの訳し方が分かります。
③ helpの後ろ
原形不定詞を語るうえで忘れてはいけないのがこの動詞。helpの後ろにも原形不定詞が使われる場合があるんです。
helpの語法として
① help + O + to V
② help + O + 原形不定詞
「Oが~するのを助ける(手伝う)」
③ help to V
④ help + 原形不定詞
「~するのに役立つ」
とただのto不定詞が使われるパターンと、原形不定詞が使われるパターンの2種類があることは必ず押さえておきましょう。
例
Could you help me to carry this box?
= Could you help me carry this box?
「この箱を運ぶのを手伝ってもらえませんか」
以上のことを踏まえた上で今回の課題英文をリーディングしてみましょう。原形不定詞が使われた例文がとても楽に読めることが分かるはずです。
原形不定詞の練習問題
For example, when placing a customer on hold on the telephone, many firms play music to fill the silence and help make the wait seem less negative.
【単語・表現】
- place A on hold on the telephone「Aを電話口で待たせる」
- seem less negative「悪く思わせない」
解説
この英文は文末がピリオドで終わっているので、文頭のwhenが「疑問詞」で使われていないことは明白です。
ということはこのwhenは「接続詞」ということになりますが、その割には後ろがplacing…と主語(S)と動詞(V)の形になっていません。ですが、
接続詞の後ろの主語(S)+be動詞は、主節の主語(S)と同じ場合は省略することが可能。したがって
と主節の主語とbe動詞を補って訳していきましょう。
訳「例えば、顧客を電話口で待たせている時に、多くの会社は…」
接続詞の後ろの主語(S)と動詞(V)がない場合の対処法って?と思ってしまった人は以下の記事を確認してみてください。
文型的にはSVOの第3文型で特に難しくはありません。「多くの会社は音楽をかける」です。問題はto fill以下の不定詞句ですよね。
文の要素(SVOC)に入らない不定詞句は「副詞用法」か「形容詞用法」なのですが、ここではどちらでしょうか?
こんな時はfillの主語(S)を考えてみましょう。もし、to fill以下が形容詞用法ならtoの前の名詞がfillの「意味上の主語」になるはずですね。
ところがここでは名詞はmusicです。つまり形容詞用法ですと以下のような関係になります。
music fill(s) the silence
「音楽は沈黙を埋める」
最近はこういった言い方も小説的な響きがあって「アリ」かなと思うんですが、残念ながら音楽には「意思」がありません。
そう、musicはどう頑張ってもfillの主語には慣れないんです。
したがってこのto不定詞は「形容詞用法」ではなく「副詞用法」。toの前にfor Aの箇所がない以上、fillの主語は全体の主語(S)と同じ。つまり
many firms fill the silence…
「多くの会社は沈黙を埋める」
と意味が通ることが分かるため、今回はto fill以下を不定詞の副詞用法と取るのが良いでしょう。ここまでの訳は「例えば、顧客を電話口で待たせている時に、多くの会社は沈黙を埋めるため、音楽をかける」です。
不定詞の3用法を正確に見極めることは非常に重要です。ですから今回はテーマではないのに思わずディープに突っ込んで解説しています。以下の記事がより具体的に学習できます。
andの等位接続詞は何と何をつなげているでしょうか。もちろん「A and BはAとBが文法上同じものがくる」というルールにしたがって特定していきます。
今回はandの後ろがhelpなので当然andの前の動詞の箇所に注目していくことになりますが、今回は候補が2つあるのが厄介ですね。
many firms play music to fill the silence and help…
こんな時はhelp以下を読んでみて判断するしかありません。ところがhelp以下ですが、原形不定詞が2箇所も使われているのが分かるでしょうか。
helpの後ろは原形不定詞、または通常の不定詞のどっちを使っても問題ありませんが、使役動詞のmakeの補語(C)は原形不定詞【のみ】であることに注意しましょう。
「そして、待つことを悪く思わせないのに役立つ」
そしてこの内容は会社が音楽をかける「目的」になっていますので、andが並列しているのはfillとhelp、つまり
many firms play music
to fill the silence
and
(to) help make the wait seem less negative.
と捉えられていれば完璧です!
全訳「例えば、顧客を電話口で待たせている時に、多くの会社は沈黙を埋めるため、そして、待つことを悪く思わせないのに役立つために音楽をかける」
等位接続詞を使いこなすのは英文解釈の生命線。絶対にマスターしましょう!具体的な学習は以下の「等位接続詞」一覧から確認してみてください。
あとがき
今回は原形不定詞とは何なのか?英文の一体どういった箇所で使われているのかについて解説しました。
特に使役動詞や知覚動詞、特にhelpなどの動詞の後ろなど、まさかtoが落ちた不定詞があるということが分かってないと戸惑う箇所には要注意です。
helpなんてtoがないと、今回の英文なんてhelp makeと、まるで動詞が2つ連続で並んで見えますよね?思わず「この英文おかしい!」なんて、原形不定詞をしらないとあわててしまうのも無理はありません。
ぜひマスターして、原形不定詞が使われている部分も華麗にクリアしてくださいね。
また会いましょう。
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