この記事は
「スラッシュリーディングは英文解釈に効果があるのでしょうか?英文を「塊」でとらえて解釈していくので、とっつきやすい印象を受けます。ですが、英文解釈で「精読」をしているときに、スラッシュで前から訳していくのは混乱しないでしょうか?」
と疑問に思っている英文解釈学習者に向けて記事を書いています。
●こんにちは、まこちょです。
英文を読んでいるときに英文に「/ (スラッシュ)」を入れて読む方法がありますよね。俗にいう「スラッシュリーディング」と呼ばれているものです。
このスラッシュリーディングは英語を語順通りに理解するために使われることが多く、長い英文も訓練で返り読みをしなくなり、また読む速度も劇的に改善することが可能です。
よく高校生が長文を読むときにこのスラッシュリーディングを多用しているのを見ることがありますね。
ところでこのスラッシュリーディング、これほど便利なメソッドを醸し出しているにもかかわらず、当「知らないと損をする英文リーディングの話」ではこれまで1度たりとも話題になっていないのをご存知でしょうか?
例えば私は英文解釈の記事を何記事か書いていますが、英文を文頭から文末へ、左から右、上から下へ読むための「直読直解」のスタイルを提唱しているにもかかわらず、このスラッシュリーディングをまるで「避け」ているかのように文中で触れていないのです。
もちろん私は「スラッシュリーディング」のメソッドは知っていますよ(笑)ば、馬鹿にするなよ。
当然このブログはコテコテの英語ブログなので、このスラッシュリーディングも長文を時間をかけずに読むための手段としてご紹介したいのは山々なのですが、それほど簡単に紹介できない理由があるのです。
その点をしっかり理解してくれる英語学習者たちには、むしろ進んで取り入れてもらいたい長文メソッドなのは間違いありません。
そこで今回はこのスラッシュリーディングのメリット、デメリットをしっかり説明したうえで、効果的なスラッシュリーディングのやり方を教えたいと思います。
この記事を読むと、次の点であなたの英文解釈力は向上します。
▶ スラッシュリーディングのメリットとデメリットが分かる
ぜひ参考にしていただいて、なぜまこちょがスラッシュリーディングを長文読解の「主」に置かないのかをご理解いただければ幸いです。
スラッシュの基本的な使い方
スラッシュリーディングというのは、文字通りスラッシュ(「/」)を英文に差し込んでいくことによって英文を「固まり」ごとに理解していく方法です。例えば
例
The basketball player in this picture is my brother.
「この写真の野球選手は私の兄です」
このような例文を【ある程度】の固まりにスラッシュで区切って読んでいくわけです。
The basketball player / in this picture / is my brother.
もちろんスラッシュリーディングは「和訳」メソッドではありませんから、日本語で理解するときも前から順に訳していくことになります。
The basketball player / in this picture / is my brother.
「野球選手 / この写真の / 私の兄だ」
もちろん日本語として非常にぎこちない文訳になりますが、言っていることは分かります。
このスラッシュリーディングは特に「節」が入り組んでいる英文などに効果を発揮し、俗にいう「返り読み」を極力しないようになるので、必然的に英文の読むスピードが上がるというメリットがあるんです。
例えば以下のような文でも
例
The worst man I have ever encountered was Bob.
「私がこれまで偶然出会った最悪の人はボブだった」
関係使節前にスラッシュを打って
The worst man / I have ever encountered / was Bob.
「最悪の人 / 私がこれまで出会った / ボブだった」
と前からぐいぐい押して英文を読むことが可能になるんです。慣れてくるとどんな文でも「前」から読めるようになってきますので、英語が苦手な人にとっては重宝するのではないでしょうか。
スラッシュリーディングのメリット
スラッシュリーディングを使うことによって起こるメリットは以下のようなものです。とくに大学入試やTOEIC等で大量の英文を読まなくてはならないテストなどに効果を発揮します。
- 英文を頭から読んで理解することができる
- 読解スピードが上がる
- ある程度のかたまりで区切るため意味が把握しやすい
- 文の組み立てが分かるようになるのでライティング・スピーキングにも威力を発揮
- リスニング能力が向上する
スラッシュリーディングは頭から読んで理解できるようになるため「返り読み」をしなくなるのが最大のメリット。
しかもそれは同時にリスニングなども頭から聞いて理解できるようになるので、リスニング能力にもビックリするほど貢献してくれます。
またある程度の「固まり」で英文を区切るため、いきおい英文の構造というものがおぼろげながら分かるようになってきます。
したがってライティング・スピーキングでもそれほどずれまくった英文表現をしなくなってくるのは大きいですよね。
細かい単語等の表現は地道な学習が必要になるかとは思いますが、少なくとも主語(S)が文末に来ちゃった、とか、動詞(V)がない!なんていうめちゃくちゃな英文は書かなくなるし、話さなくなるので、これは良いですよね。
このように一見良いところしか見当たらないように見えるスラッシュリーディングですが、ではデメリットはどういったものがあるのでしょうか。
スラッシュリーディングのデメリット
私が英語学習の初期の段階でこのスラッシュリーディングを「推さない」理由は、このデメリットによるものが大きいんです。ここから先は、あくまでも主観的なものなのでご了承ください。
このスラッシュリーディングはある程度の「基礎力」がないと、英語能力に寄与しないと個人的に考えています。
例えばここでいう基礎力とは基本英文法の理解を指すのですが、とくに5文型の概念を知らないまま、スラッシュリーディングをするとスラッシュを入れる位置がめちゃくちゃな、ただの読みずらい英文の区切りを作るだけになるんです。
例えば上記の英文ですが、以下のようにスラッシュを入れる生徒は本当に多いです。
The / worst / man / I have / ever / encountered / was / Bob.
別にスラッシュの入れる位置には正確な場所というものは特にありませんが、それにしてもスラッシュを入れたことによってかえって英文が読み辛くなっては本末転倒です。
上のようにスラッシュを入れるということは、とりあえず単語と単語の間に入れてみました、的な発想ですよね。
英文の固まりごとにスラッシュで囲むというのは一見簡単そうに見えますが、実はそれなりの文型の知識が必要です。
まず全く英文法の備えがない人が、やみくもにスラッシュを打って読むのは私は反対です。ところがこのスラッシュを入れて英文を読む英語学習者は大抵の場合
- 英文の読むスピードを上げたい
- 英語を読むのが苦手だ
が理由のメインになることが多く、平たく言うと英語にちょっと苦手意識を持っている人ほど、このスラッシュリーディングにすがる場合が圧倒的に多いのです。
「英文って主語(S)と動詞(V)が必ずあるんですか?」
的な英語の知識しかない人が、なんか便利そうというそれだけでスラッシュを使うことの弊害ははかり知れないでしょう。
つまりスラッシュリーディングが悪いとは言いませんが、使う以上はしっかりと段階を踏んだうえで行うべきです。
that節を見て、これは接続詞で「同格」のthat節だな、これは「関係代名詞」のthat節だな、しっかりと理解していない人がスラッシュリーディングを行っても正確な「読み」ができるわけないというのが私の意見です。
効果的なスラッシュリーディングのやり方
とはいってもこのスラッシュリーディングは使い方を間違えなければ、英語に苦手意識を持っていた英語学習者に、これでもかというほどの効果を与えてくれます。
したがってこれからスラッシュリーディングに挑戦したい!と考えている人のために、私が考えるスラッシュリーディングのやり方を教えます。
ぜひスラッシュをうったはいいが、今一つ効果が見えない人は参考にしてくれると幸いです。
スラッシュリーディングをするまでの手順
まず、これからスラッシュリーディングに取り組みたい英語学習者がチェックするべきポイントは以下の点です。
基礎英文法の知識は会得済みか
これが大前提になります。特に英文法の序盤で学習するSVOCの5文型の知識はスラッシュリーディングに必須の知識になります。
さすがにこの文型が分かってないと、スラッシュを入れて読んでも俗にいう「勝手読み」になる可能性が高くおススメしません。
またこのスラッシュリーディングはSVOCと同じくらいM(修飾語句)の知識が必要不可欠。例えば前置詞は名詞とひとくくりになり「形容詞」か「副詞」として修飾語句を作る、というのは英文のかたまりを理解するうえで欠かせません。例えば
例
The old man living in this suburb gave her a present in his car.
この英文にスラッシュを打つと
例
The old man / living in this suburb / gave / her / a present / in his car.
「その老人 / この郊外に住んでいる / 与えた / 彼女【に】/ プレゼント【を】/ 彼の車の中で」
となるのですが、この時giveはSVOOの第4文型を取るという知識が抜けていると【~に】【~を】の部分を正確に訳すことができません。
いくら英文のかたまりといっても、そこには英文法のルールにしたがって英文が配列されていますから、その点を無視すると正確な訳にはつながらないのです。
スラッシュの数は段階的に減らしていく
あと、これもスラッシュリーディングをしている人にありがちなことなのですが、スラッシュは将来的にはまったくつけなくても英文を前から訳すことができるように考え出されたメソッドです。
にもかかわらずある程度英文が読めるようになってきてもいっこうにスラッシュの数が減らない、もしくはなくならない人がいるのは困ったものです。
そもそもスラッシュリーディングはスラッシュを打ちながら英文を読んでいるのですから、素で前から英文をグイグイ読む人に比べて「遅い」のが普通です。
「返り読み」をしている人よりははるかに速いスピードですが、最終的にはスラッシュをまったく打たなくても英文が読めるようにしなければなりません。先ほどの例で言うと
The old man / living in this suburb / gave / her / a present / in his car.
↓
The old man living in this suburb / gave her a present / in his car.
↓
The old man living in this suburb / gave her a present in his car.
のように、意識的にスラッシュの数を減らしていくのが良いでしょう。ちなみに私はスラッシュリーディングをしませんので、読んだ英文はそれはそれは綺麗です(笑)
あとがき
さて今回はコラム的に「スラッシュリーディング」について取り上げました。そもそもこれは生徒から「スラッシュリーディングってどうやるんですか?」という質問を受けたのが始まりです。
誤解のないようにいいますが、スラッシュリーディングは英文を読む手段としては決して悪くありません。
むしろ英語と日本語の配列の違いを強烈に感じさせる手段としては非常に優れたメソッドであると考えています。
ただしそのためには、英文法の「仕込み」重要。決してこの点だけは忘れないでくださいね!
また会いましょう。
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