「分詞構文の意味上の主語がない場合、それは主節の主語と「同じ」だから書かないと学習したのですが、分詞構文が文末に置かれたとき、主節の文全体が分詞構文の意味上の主語になる場合があるのを聞きました。そんなことがあるのでしょうか。もしあるのなら例文を交えて教えていただきたいのですが…」
の疑問に答えます。
●みなさんこんにちは、まこちょです。
英文法の中には、分詞を使った「分詞構文」なるものがあります。もちろん英文解釈上重要な単元で、英文中にしょっちゅう登場しますので知らないでは済まされません。
分詞構文というのは
- ①主節と主語が同じ場合主語を消す
- ②動詞を分詞(~ing)に変化させる
用法なのですが、一見簡単なように見えて奥が深くいろいろな種類があります。
分詞構文の基本的な使い方とその応用形の形については当ブログでも徹底的に攻略しました。以下のまとめ記事で大々的にご紹介しておりますので、分詞構文についていちから学習したい方はぜひ以下の記事を確認してみてください。
特に分詞構文を語るうえで「意味上の主語」がいったい何なのかを確認するのは、正確に英文解釈を行う上で極めて重要です。
分詞構文は先ほども書きましたが、主節と主語が同じ場合、重複を避けるために省略する用法です。
例
When he went to Tokyo, he watched a baseball game at the stadium.
↓
Going to Tokyo, he watched a baseball game at the stadium.
「東京に行ったとき、彼はスタジアムで野球の試合を観た」
ということは当たり前の話ですが、分詞構文の~ingの前に主語がない場合、それは主節の主語と同じということですよね。本当に当たり前のことですが。
ところがですね、分詞構文の中には、~ingの前に主語がないにもかかわらず主節の主語と異なる場合があるんです。
つまり以下の記事の内容は通常の分詞構文のルールからは外れているのですが、例外として処理するには余りにも頻度が高く、知らないと間違いなく英文リーディングに影響します。
そこで今回は分詞構文の応用という形でこの特殊用法を解説したいと思います。以下の記事を読むと次の点であなたの英文リーディング能力は向上いたします。
▶ 分詞構文の例外とは言えども、よく英文上で出くわすことが分かる
ぜひ以下の記事をお読みいただいて、分詞構文の処理についてあなたのレパートリーの一角に加えていただければ幸いです。
主語が「主節の文全体」もしくは「主節の一部」を表す分詞構文!?
この分詞構文の形は、英文リーディングで頻出であるにもかかわらず、なぜか参考書に記載がありません。文末で使用する分詞構文で見られるのですが、まずは次の例を見てください。
例
(1) They discussed all the problems, including what they could do for him.
(2) He was lying on the bed listening to the music.
両方とも文末に出てくる~ingの用法ですが、訳し方が違います。
①文末の~ingの処理方法は2パターン
(1)の方はall the problemsを修飾する現在分詞。それは前の名詞と~ingの間に主語と述語の関係があるからです。
They discussed all the problems,⇐ [including what they could do for him].
↓
All the problems(S) include(V) what they could do for him
(1)「彼らは、彼のために何をしてやれるかという問題を含む、あらゆる問題を話し合った」
ところが(2)の文はこのノリでは解釈できません。いや、試しにやってみてください。the bedとlistening~の間に主語、述語の関係がないため、listening以下をthe bedにかけると違和感があることが分かります。
×He was lying on the bed⇐ [listening to the music].
↓
×The bed(S) listens(V) to the music.
「ベッドがその音楽を聴く」?
そう、このlistening以下は主節のSheを主語とする分詞構文なんです。
He was lying on the bed (and he was) listening [listened] to the music.
(2)「彼はベッドで横になり、音楽を聴いていた」
つまり文末の~ingは次の2つの処理があることが分かります。
【名詞+~ingの解釈】
①名詞と~ingが主語と述語の関係
→ ~している名詞
②名詞と~ingが主語と述語の関係ではない
→ ~ingは分詞構文。主語は主節と同じ
→ 「…(そして)~だ」とつなぐ
文末の~ing…は通常上記の2パターンで処理することが可能なのですが、では次の~ingはどう処理すればよいでしょうか。
例
In many parts of the world, forests have been cut down and burned down in the name of progress, causing various kinds of animals and plants to disappear.
せっかくですからしっかりと英文解釈しましょう。
この文もこれまでの例と同様、文末にcausingと~ing…がありますよね。したがって先ほどの2パターンのうちのどちらかで解釈できるはずです。ところが…
(the name of) progress ⇐ causing…
↓
(the name of) progress(S) causes(V)…
×「進歩という名が…を生じる」
とcausing以下を前の名詞にかけても意味が通じず、また主節の主語(ここではforests)と同じ分詞構文と考えても
forests ~ progress, and forests cause …
×Forests(S) cause(V)…
×「森林が…を生じる」
となり、これまた意味が通らないんです。
そうこのcausing…の意味上の主語は、なんと主節の文全体なのだ。
In many parts of the world, forests have been cut down and burned down in the name of progress, causing various kinds of animals and plants to disappear.
「世界の多くの地域で、進歩の名の下に森林が切り倒され、焼かれており、その結果様々な種類の動植物が姿を消している」
この青い部分が「原因」でありその結果cause以下の「結果」を生じているんです。
このように分詞構文の中には主節の主語だけでなく、主節の文全体、または文の一部分を意味上の主語にする用法があることは覚えておきましょう。他の例文も確認してみます。
例
Suddenly there was a power cut, causing the whole computer system to shut down.
「突然の停電あって、コンピュータシステム全体を停止させた」
Suddenly there was a power cutがcausingの意味上の主語で「原因」になっている
例
He constantly overworked, bringing on a nervous breakdown
「彼はずっと働き過ぎをして、神経障害をもたらした」
He constantly overworkedがbringingの意味上の主語で「原因」
例
When this disaster occurs, thousands and thousands die, resulting in a population crash.
「この災害が起こると、無数の動物が死に、結果として個体数の激減を招く」
thousands and thousands dieがresultingの意味上の主語で「原因」
例
This new economic geography allowed the firms to become international companies, exporting their products almost as effortlessly as selling them nearby.
「このような新しい経済地理的な状況のため、その企業は国際的な会社になることができ、近くの地域に販売するのとほとんど同じくらい容易にその製品を輸出することができた」
the firms to become international companiesがexportingの意味上の主語
②前の文全体(一部)を意味上の主語にする分詞構文の特徴
このように主節の文全体(一部)を意味上の主語にする分詞構文は特徴があり、おおむね分詞構文に以下のような語句が使われたときが多いようです。
S+V… ,
- causing…(…を生じる)
- indicating…(…を示す)
- leading to… (…を導く・…につながる)
- making…(…をする)
- meaning…(….を意味する)
- resulting in… (…を生じる)
- showing…(…を示す)
- depending on…「それは…次第だ」
③主節全体を主語にする分詞構文は関係詞の継続用法と用法が同じ
この主節の文全体(もしくは一部)を意味上の主語にする分詞構文は、関係詞にカンマ(,)がついた継続用法と考えが似ています。
関係詞の継続用法は、先行詞を前の名詞だけでなく、前文の一部、もしくは前の文全部を先行詞にすることができるのは、今回の分詞構文の意味上の主語の考え方と同じと言って良いでしょう。
例
Suddenly there was a power cut, causing the whole computer system to shut down.
= Suddenly there was a power cut, which caused the whole computer system to shut down.
あとがき
今回は主節全体(もしくは一部)を意味上の主語にする分詞構文の用法について解説しましたがいかがだったでしょうか。
この分詞構文は、英文リーディングをしていると頻繁に目撃するのですが、なぜか参考書に記載されていない盲点的なポイントになります。
もちろん文末の~ingの考え方としてまずは①のプロセスを経て、②の考えに移行する基本的な姿勢は絶対に守りましょう。
【文末の~ingについての基本的な考え】
①~ingが前の名詞を主語にするか、それとも主節の主語を意味上の主語にするか
↓
②主節の全体(一部)が~ingの意味上の主語かどうか
また、分詞構文について学習手順が今一つ分からない方は、以下の記事を読んでみてください。分詞構文について完全に理解できるかと思います。
また、会いましょう。
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